◆ごあいさつ 代表理事 池端俊策(脚本家)

 1960年代の中頃、高校生だった私は、学校の図書室で映画の名作シナリオ集を偶然読み、映像芸術が精密に組み立てられた言葉から立ち上げられたものだと知りました。ト書きから情景が想像でき、セリフから人物の顔が浮び上がり、実に楽しい体験でした。是非その映画を観たいと思いましたが、住んでいたのは地方の町で、当時まだビデオも無く、その映画を観ることができませんでした。それでも脚本というものに興味を持ち、古本屋でテレビドラマの芸術祭受賞作の脚本集をみつけてテレビドラマ初期の優れた作品に接し、大いに感銘を受け自分もこういう世界で生きたみたいと思うようになりました。

 

 

 それから40年以上も経ち、私は知人から私自身が80年代に書いたドラマを観たいと頼まれ困惑しました。私の手元に有るビデオテープは画像が劣化していて観せられる代物ではなく、局に問い合わせてもすでに消去されていたのです。結局、脚本を読んでもらうしかありませんでした。しかし、思えば私は脚本を読むことでドラマ世界の入口に立ったわけです。このことは大事なことだと思いました。テレビドラマの歴史とその面白さを脚本を通して広く知ってもらい、親しんでもらい、そのことでテレビ文化の奥深さを次代の人々にアピールすることができれば大変意義は有ると思ったのです。

 

 

 市川森一さんが提唱され、山田太一さんを始め様々な方が推進してこられた脚本アーカイブズの活動はスタート以来12年が経ちました。失われた映像の台本と脚本を集める作業が進み、次はその整理とデジタル化に重心を移すという状況にあります。皆様のお力添えをいただき、この活動を継承していき、テレビ文化の質的発展に寄与できれば無上の幸せであります。